◆腱反射亢進・消失の解説(もくじ)

◆腱反射のメカニズム

腱反射は何故病気や症状の診断で利用されるのでしょうか?ここでは腱反射の亢進と消失のメカニズム、人体の防衛反応の仕組みについて解説します。

【アキレス腱組織の構成と付着する骨格筋について】

 アキレス腱は、下腿三頭筋を構成する、ふくらはぎにある腓腹筋(二頭筋)とヒラメ筋の組織と合流して形成されております。

 アキレス腱は下腿で筋頭が集まる合流部分から腱を構成し踵の骨である踵骨(しょうこつ)上端の突起部分に付着しています。

 アキレス腱の下端付着部位の踵骨に付着する腱であることからアキレス腱は踵骨腱(しょうこつけん)とも呼ばれます。

 アキレス腱は、ヒトの人体に存在する腱組織の中では最大の腱組織であり、また最も強靭な腱です。

◆アキレス腱の役割について

 アキレス腱の主な役割は、足関節(足首の関節)の底屈動作です。

 底屈とは、立位状態で踵を上げる際の動き、座位では足を前方に伸ばした状態でつま先を伸ばす動作の事です。

 また、腱自体はスプリングの役割も担っており着地時の衝撃の緩和の際にもアキレス腱は働きます。

 アキレス腱そのものは力を生み出す組織ではありませんが、筋肉や外部からのパワーの伝達、増幅の役割を担っているのがアキレス腱と言えます。

◆椎間板ヘルニアの亢進について

 アキレス腱は、外力により反応を起こす腱組織です。この反応を利用する手法が腱反射と呼ばれる判定手法です。

 椎間板ヘルニアの場合は、障害によって腱の反射が消失している場合があります。

 この特徴を利用して、椎間板ヘルニアなどの診断ではアキレス腱反射を確認し症状を確認する場合があります。

 腰椎椎間板ヘルニアでは、膝蓋腱・アキレス腱の反射を確認し状態の把握を行います。

 尚、頚椎椎間板ヘルニアでも神経系の障害によってアキレス腱反射の消失を確認するケースがあります。

◆腱反射の誘発部位(上肢)

 腱反射は膝蓋腱、アキレス腱反射に限らず様々な部位の腱にて行われます。ここでは、一般的に行われる反射測定の部位別の種類を解説します。

【上肢の反射・腱反射の種類】
★上腕二頭筋反射
★逆転上腕二頭筋反射
★上腕三頭筋反射
★逆転上腕三頭筋反射
★橈骨反射
★逆転橈骨反射
★回内筋反射

【体幹部の反射の種類】
★胸筋反射
★腹筋反射(腹筋上部・腹筋中部・腹筋下部)

 体幹部の反射は上記2箇所の反射測定が主流です。

 しかし、診断方法として腱反射の誘発の診断が難しく経験を要します。

 腹筋の反射に関しては、腹直筋の部位別に反射測定を行います。

【下肢の反射・腱反射の種類】
★膝蓋腱反射
★アキレス腱反射
★下肢内転筋反射
★膝屈筋反射

 障害の種類にもよりますがこの下肢の反射は最も頻繁に行われる反射測定の一つであると言えます。

◆腱反射の亢進・消失について

 反射検査の際に、反射が過剰に働く場合は反射の亢進を疑います。

 これは、抑制されているシナプス伝達が機能していない状態であり神経経路の異常をあらわします。

 逆に反射の低下・消失が見られる場合は脊髄神経の異常、または筋肉そのものの異常の可能性を検討します。

 もともと神経系に異常がある場合、反射そのものがあらわれにくい傾向にあるので注意が必要です。

◆腱反射のメカニズムを紐解く

 腱反射のメカニズムを紐解くと、腱反射はヒトが生まれつき持っている防衛反応である事がわかります。

 人体は突発的な外力が人体に働く際に、筋組織が損傷されるのを防ぐ為にあらゆる反射反応を示します。

 これは、例えば足のつま先をぶつけた時に、とっさに足を引っ込める動作やストーブなど熱いものに不意に触れてしまった場合に手をとっさに引く動作なども反射に属します。

 この防衛反応である反射のスピードは生命を守る為に、高速化で処理され通常の神経経路よりも素早い反応を示すのです。

 尚、検査に利用される反射はこのような高速回路をもつ反射ではなく、一部情報を抑制されている運動回路を利用する事となります。

 その為、腱反射テストでは打腱後、若干遅れて反応があらわれる傾向を確認することができます。

◆アキレス腱反射測定・診断

 アキレス腱反射は幾つかの腱反射測定部位の中でも膝蓋腱反射とともに最も広く診断が行われる部位の一つであると言えます。ここでは実際にアキレス腱反射の測定を行う際の打鍵部位と判定のポイントを見ていきましょう。

アキレス腱反射の測定方法、打鍵部位

 アキレス腱反射を実際に行う方法について解説します。

 反射を確認するために使用するものは「打腱器」と呼ばれる専用の器具を使用します。

 打腱器は基本的にゴム上のハンマーを利用します。

 打腱部位は、アキレス腱下部、踵から上3~5センチ部分を直接打腱し反応を確認します。

※アキレス腱反射の打腱部位=アキレス腱下部・踵下端部から上方3~5センチ部分

 打腱では実際の反射の有無、大きさ、広がりなどの要素によって、その症状をチェックしていくことになります。

 場合によっては、反射が完全喪失している場合もあるので、反応がない場合に過度に打腱する意味はありません。

◆アキレス腱反射の判定ポイント

 アキレス腱反射の判定のポイントは以下のとおりです。

◆量的変化(亢進、低下、消失)
◆質的変化(筋収縮のスピード、広がり)
◆左右の反応差

 以上のポイントを観察し腱反射の状態を判定していきます。

 但し、アキレス腱反射に限らず腱反射を確認する際は患者の意識的な緊張を防止する事が重要です。

 これは、緊張によって腱反射は大きく異なる事が原因です。

 過度な緊張は、腱反射そのものを防止してしまい症状の判定が下せなくなってしまいます。

 尚、正しい誘発を促すにはジェンドラシック手技の記事をご参照ください。

 リラックスできる状況で行うことで正しい反応を得られる事を忘れてはいけません。

◆反射の受容器・レセプターについて

 腱反射の受容器、いわゆるレセプターは「筋紡錘」及び「腱紡錘」に存在します。

 これらのレセプターは感覚を直接脳を解さずに防御反応として反射を起こします。

 受容器の働き、役割は主に筋の長さの変化の感知です。

 これらの変化を司るセンサーが受容器の役割であり、その感度は神経によって伝達・コントロールされております。

◆膝蓋腱反射測定・診断基準

 膝蓋腱反射はアキレス腱反射の項でも解説した通り、反射の測定部位の中ではとても多く利用される部位でもあります。ここでは膝蓋腱反射の打鍵部位から膝蓋腱反射測定の目的について解説します。

膝蓋腱組織の構成について

 膝蓋腱反射とは、大腿部の主力となる前面の筋肉である大腿四頭筋に付着する強靭な腱組織、膝蓋腱の反射です。

 膝蓋腱は反応が目視でも確認しやすい点にあることから、腱反射テストでは頻繁に膝蓋腱反射が行なわれております。

 膝蓋腱の末端部分は膝蓋骨(膝のお皿)下部に付着しております。

 その為、反射テストでは膝頭の下部を打鍵器で打鍵し反応を測定します。

◆膝蓋腱反射の亢進について

 膝蓋腱反射テストを行い、亢進が確認できる場合は、脳神経の麻痺などの神経系障害をまず疑います。

 もちろん腱反射テストだけで、診断できるのは表面部分のみでしかありません。

 しかし、これらの亢進が明確にあらわれる特徴は、簡易的に症状を確認できる唯一の手段とも言えます。

 尚、膝蓋腱反射の亢進がある状態を医学的に「膝クローヌス」と呼びます。

◆ジェンドラシック手技について

 腱反射の測定では、検査を受けるものが過剰に打鍵部位を意識しているケースなどでは、筋肉が過剰に反応し腱反応を誘発しづらい状況も考えられます。

 この場合は、腱反射を誘発するために、たとえば下肢の膝蓋腱反射などを行なう際は、両手を胸の前で引かせるなどし、意識付けを別の部位に起こさせることで腱反射を誘発する事ができます。

 尚、このように意識を分散する形で打鍵を行う方法をジェンドラシック手技と言います。

◆深部腱反射の測定部位について

 深部腱反射は基本として大きな骨格筋に付随する腱組織を対象とします。

 これは大きな骨格筋ほど腱反射の誘発が行ないやすく、また反射が確認しやすい為です。

 腱反射で用いられる基本的な打鍵部位としては以下の様な代表的な打鍵部位がありますので把握しておきましょう。

【深部腱反射の打鍵部位】
①膝蓋腱反射⇒膝のやや下部
②上腕二頭筋遠位腱⇒肘窩の内側
③アキレス腱反射⇒アキレス腱踵骨部位
④上腕二頭筋遠位腱⇒肘窩の内側
⑤上腕三頭筋の遠位腱⇒上腕後面、肘頭より近位
⑥腕橈骨筋の遠位腱⇒前腕外側の遠位