痴呆症(認知症)初期症状

日本国内で推定患者数300万人に迫る若年性・老年性痴呆症(認知症)の初期症状、及び診断基準を初心者向きにわかりやすく解説。

◆痴呆症(認知症)初期症状の解説(もくじ)

◆はじめに

 痴呆症の「痴呆」という言葉は、その漢字単体がもつ意味合いに「愚か」もしくは「馬鹿」という意味合いが含まれるのは周知の事実です。
 その為、この症状に対する呼び名に対して「痴呆」という言葉を用いるのは差別的ではないか?
 という意見が出されました。
 この意見を受け厚生労働省は平成16年6月に、痴呆症に関して新たな呼び名・医学的名称を一般から募集しました。
 そしてその中から最も適切な症状を表す用語として適当であるとされた言葉である「認知症」という名称が選ばれました。
 同年、12月24日、厚生労働省は、行政として扱う文言などについても全て「痴呆」から「認知症」へとの名称変更を通知しております。
 尚、厚生労働省老健局長通知による行政用語の改正は以下の通りです。

●痴呆  ⇒  認知症
●痴呆性高齢者  ⇒  認知症高齢者
●痴呆の状態にある高齢者  ⇒  認知症の高齢者
●痴呆性高齢者グループホーム  ⇒  認知症高齢者グループホーム

 尚、法律上の文言、条文に関しては2005年の通常国会の
●介護保険法の改正
 によって表記の改正が行われております。
 当サイトにおける表記に関しても認知症という名称へ改正を加えておりますが、痴呆症という言語が未だ尚、広く認識されている部分もあり記事内容に関してはそのまま掲載しておりますことを事前にご了承下さい。

◆痴呆症とは?早期発見・早期治療開始が鍵を握る

 近所のおじいちゃんが痴呆症らしいよ。このような会話を耳にされた方も多いかもしれません。痴呆症はそれほど身近に存在する症状のひとつです。日本は高齢化社会があまりにも急速に進んでいる国ですからしっかりとした知識を学習しておくことはとても大切な事です。

【痴呆症とは?】

 痴呆症とは、一般的に物忘れなどが激しくなり、様々な特異的な行動をとる症状を発症する病気と考えられております。
 この独特の症状は確かに看護側としては少し違和感を伴う現象であることは確かです。
 しかし、人間はある程度年齢を重ねると、各種機能の低下に伴い
●物忘れ
 いわゆる「ぼけ症状」を大半の方が発症するようになります。
 この物忘れが多くなることは加齢に伴う脳の老化なども関与しており現在様々な分野で研究がなされ急速にメカニズムが解明されつつある分野でもあります。
 尚、痴呆症(認知症)の存在が明確に医学で解明されるにつれて、これら一般的な老化現象以外の要因が組み合わさっている事が認知されはじめたのはここ数年の話です。

◆痴呆症の早期発見の重要性について

 痴呆症を考える上で最も大切なことは、患者本人に現れている症状が、
●一般的な老化現象によるものなのか?
●痴呆症(認知症)によるものなのか?
 を明確に見極める事が大変重要になってきます。
 また、これらの見極めは早い段階、早期発見ができれば治療が可能なケースも多く確認されております。
 認知症の約50%の患者がアルツハイマー型認知症であるとのデータもありますが、この治療が困難であるとされている
●アルツハイマー型
 に関しても症状の進行を遅らせる効果をもつ最新治療薬も開発されはじめているのは皆さんご存知かと思います。
 基本的にアルツハイマー型認知症は加齢と共に進行していく傾向にあるため症状がゆっくり進行するだけでも看護側の負担は大きく軽減されます。
 尚、数年後には、症状の進行を遅らせるだけでなく、根本の治療が可能となる医薬品の開発がなされてくる可能性も現実的な話となってきているため今後の研究が大きな鍵を握る医療分野としても注目を集めております。
 ですから、痴呆症の治療に関しては
●早期発見
●早期治療
 が、今後の治療過程において最も重要な要素を占めてくることとなります。

※痴呆症・認知症は早期発見・早期治療開始が何よりも重要

◆若年性・老年性の発症年齢の定義・40代〜50代の早期発症事例

 以前はほとんど認識されていなかった若年性痴呆症(若年性認知症)の診断基準が明確化されたことにより、現在は推定でも10万人〜20万人以上の患者がいると予測されております。また若年性アルツハイマー型認知症に関しては遺伝的な要素の関連性も研究されてきております。ここでは若年性と老年性の定義・分類について学習します。

【2種類に分類される痴呆症】

 痴呆症の発症の原因の約50%を占めるとされるアルツハイマー型認知症では、発症が確認された年齢によって大きく2種類に分類されます。
 もし65歳未満の年齢で初期症状の発症が確認された場合は、若年性痴呆症(若年性認知症)として診断されます。
 この若年性認知症の割合は非常に低い傾向にありますが進行が早いなどの独特の傾向が確認されております。
 また65歳以上の年齢で初期症状の発症が確認された場合は老年性認知症として診断されます。
 アルツハイマー型認知症と呼ばれる病気そのものの認知度が低かった以前は、9割以上が老年性痴呆症として診断されており、若年性痴呆症の医学的な症例は多くありませんでした。
 このように症例が少なかった原因には当時、明確な診断基準がなく若くして発症する可能性があることが広く知られていなかったという時代背景も関与しております。

◆若年性痴呆症患者数は推定20万人以上・40代〜50代の症例も

 老年性痴呆の発症傾向を調べた統計データでは、
●加齢とともに発症確立が高まる
 とされており、特に85歳を過ぎた時点で、発症確率は急激に上昇するとされております。
 若年性痴呆は近年急速に患者数が増加している傾向にあり、推定20万人以上。
 この推定も高齢化社会の進行に伴い今後は更に増加していく可能性も指摘されております。
 これはとても身近で確率の高い疾患であることの証明とも言えるでしょう。
 このように推定患者数の増大が予測できるようになってきたのは、若年性アルツハイマーの診断を下す事が可能となった
●診断基準の明確化
 などの要因が絡んでいるのは間違いありませんが、その数はやはり増加の一途を辿っているのが現状です。
 若年性アルツハイマーに関しては
●遺伝的な要素の関与
 も徐々に確認されつつあり、もし親が65歳未満で認知症を発症している場合、その子供の認知症の発症率も大きく高まることが検証されつつあります。
  尚、アルツハイマー型認知症の場合、染色体による遺伝性が認められる場合は家族性アルツハイマー病(遺伝性アルツハイマー病も同意)として分類されます。
 また、60代以上の患者が圧倒的に多い若年性アルツハイマーではありますが、症例としては40代、50代の早期発症事例も確認されており、今後更に診断が明確化されてくると40歳〜50歳代における患者数が増加してくる可能性もあると言えます。

◆診断基準(代表的な5つの検証項目)

 痴呆症(認知症)の最も代表的な初期症状は物忘れが激しくなる点にあります。しかしこの物忘れに関しては誰でも加齢に伴い進行する部分でもある為、診断を行う際には病気による物忘れであるのか?それとも生理的な老化による物忘れ症状であるのかを見極めていくことが重要です。

【物忘れの原因を確認する】

 痴呆症(認知症)の物忘れは、生理的、いわゆる加齢に伴う物忘れとは若干性質が異なります。
 認知症の可能性が検討される場合は、まず
●生理的な物忘れとの違い
 を把握しその違いの確認から行っていくことが重要です。
 家族間に高齢者がいる家庭では、このような違いを把握しておくことで初期症状の早期発見や態度の変化などを観察する手助けともなるはずです。
 ここでは一般的な痴呆による物忘れと、生理的な物忘れの違いについて見ていきましょう。

◆痴呆症の診断基準5項目

 痴呆症の物忘れと、生理的な物忘れの違いは大きく以下の5項目で異なる特徴を示すとされております。
 ここに掲げる項目は実際の痴呆症としての診断基準でもあり必ず確認される項目でもあります。
 あくまで傾向の範囲であり絶対的なものとは言えませんが重要な指標でもあるので必ず確認しておきましょう。

【痴呆症による物忘れと生理的な物忘れの診断基準項目】
●記憶力障害
●進行性
●見当識障害
●物忘れ病状の自覚の有無
●生活障害・日常生活への支障の有無

 これらの項目をひとつずつ検証を行っていくことで、病理的な疾患であるのか?
 それとも、生理的な加齢に伴うものであるのかを見極めていくことになります。

◆記憶力障害の初期症状の具体例

 母が自分の顔を忘れてしまっているみたい…これは痴呆症患者の家族が体験する可能性のある状況です。記憶力障害は痴呆症の診断項目の中でも特に重要な指標です。ここではより具体的な例を参考にしながら初期症状を確認していきましょう。

【記憶力障害は非常に重要な診断指標】

 痴呆症(認知症)による物忘れと生理的な加齢に伴う物忘れの大きな違いが現れるのが、この
●記憶力障害
 の性質の違いであると言えます。
  ですから前項では5つの診断項目について触れましたが、記憶力障害の性質の違いの確認は重要な診断指標のひとつです。
 よくある物忘れのケースとしては以下のようなケースがあるかと思います。

●漢字が思い出せなくなり辞書を引く頻度が高くなった
●隣の部屋へ物を取りに行ったが部屋につくと何をとりに来たのかがわからなくなり、また元の部屋に戻ると思い出す
●一度会っている人で顔は覚えてはいるが、その場で名前を思い出すことが出来ない
●電話で知人と今度合う約束の話しをしていたが、電話を切った直後、待ち合わせ時間などを思い出せなくなる
●今日もしくは、昨日の昼ごはんのおかずなどが思い出せない
●自分で置いたものをどこに置いたか?と家族に尋ねる機会が増えてきた

 これらの項目を見ながら胸がドキドキされた方もいるのではないでしょうか?
 実は上記に掲げたような物忘れは、生理的な加齢に伴う物忘れです。
 このような物忘れは、他人から指摘を受けたり、ひとつのきっかけがあれば思い出すことが出来るケースが多くあります。
 例えば、一度会っている人の名前を思い出せないケースの場合、「一度会っている事をぼんやりとでも把握できている点」がポイントです。

◆記憶そのものが消え始める初期症状

 では次に痴呆の症状の場合についてどうなるのでしょうか?
 先程と同様のケースの場合で見ていきましょう。
 痴呆症によって記憶障害が発生しているケースでは、一度合っていた友人であっても
●会ったことそのものを覚えていない
 いわゆる、その記憶がごっそり抜け落ちている症状を示す傾向があります。
 これは間違いなく大きな違いであると言えます。
 電話で知人と会う約束をしていたとしても、その約束の時間や、待ち合わせ場所がわからないのではなく、約束そのものを覚えていない状態です。
 ですから、他人が指摘をしたとしても、本人の記憶にはその事実が全くない事から思い出すことはありません。
 このような傾向からもわかるように、記憶力障害による初期症状の発見は、家族や仕事の同僚などの第3者が何かしらの異変に気がついているケースが多いことも大きな特徴です。
 母が自分の顔を見ても自分とわからなくなってしまった…
 とても胸が苦しく悲しい状況ではありますが、これもやはり多く耳にする言葉でもあるかと思います。
 このような場合は記憶がごっそりと抜けてしまっている痴呆症の症状の代表であることを受け入れる勇気を持つ必要があると言えるかもしれません。(※この状況だけで確実な診断はもちろんできません)
 再度確認ですが痴呆症の物忘れと生理的な物忘れの違いは大きく以下の5点で異なります。
●記憶力障害
●進行性
●見当識障害
●物忘れ病状の自覚の有無
●生活障害・日常生活への支障の有無
 これらの検証を行うことで、病理的な疾患であるのか?
 それとも、生理的な加齢に伴うものであるのかを見極めていくことになります。